窓猫雑貨店でお取り扱いしている「犬のオブジェ」などの焼き物を制作されている、日々窯(にちにちがま)の坂口実里さん。三重県伊賀市の里山で、愛犬と2匹のヤギたちとともにのびのびと作陶しています。
制作風景や動物たちとの暮らしを覗きに、工房を訪ねました。

陶芸家の家族3人で営む「日々窯」
伊賀といえば、焼き物に詳しい方は「伊賀焼」を思い浮かべるかもしれません。近隣にはたぬきの置物で有名な信楽もあり、あたり一帯、昔から焼き物が盛んな地です。
日々窯の工房があるのは、小川が流れるのどかな山あいの田園地帯。坂口さんは、同じく陶芸家の父、母とともに3人でそれぞれ作品制作を行っています。
「父と母が20年以上前にこの土地に移住し、自宅兼工房を一から作り上げてきました。このあたりは古くから陶芸が盛んで作り手も多く、薪窯など本格的な設備を使うのにもぴったり。日々の暮らしに手仕事が馴染む風土を気に入ったようです」


工房では、3人がそれぞれ自らの作業机をもち、自身の作品と向き合っています。
土の匂いにつつまれた空間には、実直な手仕事の痕跡がそこかしこに。みな各々の作風で自由に作陶し、最後は同じ窯で焼き上げます。


焼き物に囲まれて育ってきた坂口さんですが、はじめから作り手を志していたわけではなかったといいます。
「高校卒業後、一度は陶芸と無関係の仕事に就きました。ただ、やはり陶芸をやりたい気持ちもあり、コロナ禍で自炊をする機会が増えたことをきっかけに食器を作りたいと思うように。両親から土の練り方など基礎を教えてもらい、あとは日々自ら試行錯誤を重ねてきました。やりたいと思ったときに、すぐ取り組める環境があったことがいちばん大きいかもしれません」
風土に根ざした誠実な手仕事
坂口さんが普段主に制作しているのは、日常づかいしやすい器です。「ろくろ」のほか、薄くのばした粘土を型にはめて成形する「型物」などの技法を用いて制作しています。
「器を作る際には、何よりも使いやすさと軽さを重視しています。特にこだわっているのは釉薬。冬に家で薪ストーブを使うのですが、その灰を原料にして『灰釉』とよばれる釉薬を自作しています。窯の中での器の置き場所やその日の火加減で、模様の出方が大きく変わり、ガラス質の色合いや流れ模様がとても美しい。難しくも、おもしろい技法です」


土は基本的に近隣の信楽で取れるものを使っています。信楽にはかつて、現在の琵琶湖のルーツとされる「古琵琶湖」があったそう。その地層から採れる粘土は、耐火性が高くとても良質で、土肌の質感豊かな信楽焼や伊賀焼を生み出しました。
坂口さんのお父様は、ときに近所の山から土を取ってきて器を作ることも。暮らしに仕事が根付いた日々窯ならではのエピソードです。
動物たちとの暮らしから着想を得る
今回、窓猫雑貨店でお取り扱いする動物のオブジェは、普段坂口さんがイベントなどへの出店時に制作しているものです。2025年の「奈良登大路陶器市」で出会い、その豊かな表情やフォルムに惹かれ、お取り扱いさせていただくことになりました。

日々窯には、看板犬のタムちゃんがいます。犬種はウェルシュ・コーギー・カーディガン、今年で8歳になる女の子です。お客さんが来ると、大きな耳を立ててちょこちょこと駆け寄り歓迎します。
また、工房の外には2頭のヤギも。まだ子ヤギのうちにご近所さんから譲り受け、豊かな自然の中ですくすくと育ちました。


生まれたときから動物はとても身近な存在であり、特に犬は大好きだという坂口さん。
「犬のオブジェを制作する際は、図鑑などを見ながら基礎となる部分を作り、あとは自由に肉付きや毛並み、表情を足し引きしていきます。毛の質感が好きなので、ついもこもこした犬を作ってしまいますね。今回だと、SNSで見かけてかわいいと思った長毛のアフガン・ハウンドなどは初めて作ってみました」

作品の中には、赤土の表情をそのまま生かすものもあれば、ホイップクリームのように白く軽やかな毛並みをたたえた子も。しっかりとその犬種の特徴を捉えたうえで、表情や毛の質感を絶妙にデフォルメすることで、なんともいえないゆるさと愛嬌が生まれます。犬をよく知るからこそなせる技です。
ちなみに、作品のひとつ「びっくり犬」(写真左)の特徴的な目は、昔坂口さんがビーグルを飼うご近所の方のために焼いた、犬のクッキーの表情を思い出して作ったそう。
またセント・バーナードをモデルにした作品(写真右)は、坂口さんにより「セント・バナ男(オ)」と命名。キャラクターを知ると、より愛着がわいてきます。

伊賀の澄んだ空気のもと、動物たちとともに日々のびやかに暮らす坂口さんならではの、ユニークで質感豊かな作品の数々。
ぜひお気に入りの1匹を見つけてみてください。

|